健康の定義

1)人々は健康をどうとらえているか
 みなさんは、自分の今の健康状態について、どう思っていますか。日本で、自分は健康だと思っている人が、どのくらいいるか、見てみましょう。厚生労働省による平成28年の「国民生活基礎調査」では「あなたの現在の健康状態はいかがですか」という質問に対して、「よい」が20.7%、「まあよい」が17.8%、「ふつう」が47.0%、「あまりよくない」が11.2%、「よくない」が1.8%となっています。「ふつう」という回答が5割ほどを占めて最も多いですが、「よい」「まあよい」と合わせると、実に85.5%の人が、少なくとも「ふつう」程度には健康だと、思っているということです。
 健康だと思う割合は、年齢が下がるほど高く、年齢が上がるほど低くなります。しかし、65歳以上であったとしても、75%の人が少なくとも「ふつう」程度には健康だと答えています。傷病すなわち、けがや病気で通院している人の割合は、20~30代では約2割であるのに対して、65歳以上では約7割と3倍以上であるにもかかわらずで、健康状態の認識は大きく変わらないということがわかります。けがや病気の有無だけが、健康の判断材料でないことがうかがえます。

 次に、人々が何を理由に健康だ、と判断するのかについて見てみましょう。厚生労働省の平成26年の「健康意識に関する調査」では、「普段、健康だと感じていますか」と質問して健康状態をたずねた後に、「健康感を判断する際に、重視した事項は何ですか」として、3つまでの回答を求めています。その結果は、「病気がないこと」が63.8%で最も多く、次いで「美味しく飲食できること」が40.6%、「身体が丈夫なこと」が40.3%と、身体的な面が大半を占めています。しかし「不安や悩みがないこと」19.1%、「幸せを感じること」11.9%、「前向きに生きられること」11.0%、「生きがいを感じること」9.5%など、精神的な面の回答も1割ほどあります。
 また、それ以外の回答でも「人間関係がうまくいくこと」「仕事がうまくいくこと」「他人を愛することができること」「他人から認められること」はいずれも10%未満ですが、これらは、人と人のつながりといった社会的な面の回答だと言えます。
この厚生労働省の調査では、事前に、身体的な面、精神的な面、社会的な面の3つをとらえた項目を用意していたと思われます。この3つは、広く知られているWHO、世界保健機関の健康の定義にも含まれています。1948年の定義で、すでに70年が経過していますが、いまだによく使われている定義です。WHOの定義は、次のような訳が代表的です。

「健康とは、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態であり、単に病気がないとか虚弱でないということではない」(Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity)

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